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Linux環境でのMBR・パーティション障害とその復旧手順

もくじ

【注意】本記事は、Linux環境でのMBR・パーティション障害(起動不能、パーティション消失、誤操作など)に対して、一般的に推奨される“被害最小化(ダメージコントロール)”の考え方と復旧手順を整理した情報提供です。実際の最適解は、ディスク状態(物理故障の有無)・構成(RAID/LVM/暗号化/仮想化)・重要度・復旧期限・書き込み状況などで変わります。重要データが関わる場合は、判断を誤ると損傷が進行して復旧難易度が上がることがあるため、個別案件として株式会社情報工学研究所のような専門事業者に相談してください。

 

第1章: 深夜の「起動不能」—“直す前に、まず状況を固定しよう”

サーバの再起動後にOSが上がらない。画面には GRUB rescue>no such partition、あるいは何も出ずにBIOS画面へ戻る。現場のエンジニアなら、ここで最初に思うはずです。

「…今日に限って。ログも取りたいし、朝までに戻さないと。とりあえずgrub-install叩けば直るんじゃ?」

この“とりあえず”が、MBR・パーティション障害では一番危険です。理由は単純で、ブート領域やパーティションテーブルは小さくても重要度が高く、上書きが起きると後戻りできないからです。復旧作業の基本は「正しさ」より先に、証拠(現状)を失わないことです。

ここでのゴールは「すぐ直す」ではなく、“被害最小化”の姿勢に切り替えること。具体的には次の3点です。

  • 書き込みを止める:障害ディスクをマウントしない/fsckを安易に走らせない/再インストールしない。
  • 現状を記録する:後で比較できるように、ブロックデバイス情報・パーティション情報・ログを控える。
  • 復旧の“層”を決める:MBR(or GPT)/パーティション/ファイルシステム/上位(LVM/暗号化)どこが壊れているかを切り分ける。

焦っているときほど、手順を短くしたくなります。でもこの手の障害は、最初の10分を丁寧に使うほど、結果として復旧が速いことが多いです。復旧は“コマンドの強さ”ではなく、“順序の強さ”で決まります。

もしこの時点で「物理故障っぽい音がする」「I/O errorが頻発」「SMARTで警告」などが見えているなら、ソフトウェア修復を急ぐ前に、専門事業者への相談が合理的です。物理故障が混ざると、ソフト側の操作がディスクの寿命を削るためです。

 

第2章: MBR/パーティション/ファイルシステム—壊れた層を切り分けるだけで8割決まる

MBR・パーティション障害で混乱が起きる原因は、「何が壊れたか」を曖昧なままコマンドを打ってしまうことです。まず前提を整理します。Linuxのストレージは“層”でできています。

典型的な症状 よく使う確認手段
ブート領域(MBR/EFI/GRUB) 起動しない、真っ黒、GRUB rescue、ブートデバイス不明 UEFI/BIOS設定、レスキュー環境でgrub/efiの存在確認
パーティションテーブル(MBR方式/GPT方式) パーティションが消える、容量が不自然、OSは起動しない/マウントできない lsblk, fdisk -l, parted -l, gdisk, blkid
ファイルシステム(ext4/xfs等) マウント失敗、read-only化、整合性エラー、ディレクトリ破損 dmesg, fsck(最終手段), xfs_repair(条件付き)
上位構成(LVM/RAID/暗号化) PV/VGが見えない、mdがdegraded、cryptが開けない pvs/vgs/lvs, mdadm, cryptsetup, journal/log

ここで重要なのは、「MBR=古い」「GPT=新しい」で終わらせないことです。UEFI環境でもGPTが一般的ですが、GPTディスクには先頭に“保護用MBR(protective MBR)”が置かれます。つまり「MBRが壊れた」と言っても、実際はGPTヘッダやパーティションエントリ側の破損であるケースもあります。

また、障害の見え方は“層”によって違います。

  • ブート層が壊れると、ファイルシステムが無事でも起動できません(OSはあるのに起動だけ失敗)。
  • パーティション層が壊れると、そもそも「どこからどこまでがデータか」が分からず、マウントに到達しません。
  • ファイルシステム層が壊れると、パーティションは見えるがマウントできない/不安定になります。

“なるほど”のポイントはここです。復旧は万能コマンド探しではなく、壊れた層に対してだけ介入する作業です。だからこそ、次章では「やってしまいがちな地雷」を先に潰します。

 

第3章: やりがちな地雷—再インストール、fsck連打、無計画なddが状況を悪化させる

起動しないとき、現場で出がちな“心の会話”をそのまま書きます。

「時間がないし、再インストールしてからマウントしてデータ救えばいいか」

「fsck叩けば直るっしょ。いっぱいエラー出るけどy連打で」

「ddで丸ごとコピーすればOK。/dev/sdXを/sdYへ…えっと」

これ、全部事故りやすいです。理由と回避策を、事実ベースで整理します。

地雷1:再インストールで“上書き”が確定する

再インストールは、ブート領域やパーティション情報、場合によってはデータ領域にも書き込みます。特に「自動パーティション設定」は、復旧の前提(元の配置情報)を破壊しやすい。復旧作業では“元の手がかり”が命なので、最初の一手としては不向きです。

地雷2:fsckは“直す”が“壊す”方向にも働く

fsckは整合性を取るためにメタデータを書き換えます。これは「正常な前提が分かっている」場合に強い一方、原因がパーティション層や物理層にある場合には、結果として整合性を“別の形に固定”してしまい、後からの解析が難しくなります。fsckは「最後の一手」に回し、まずは読み取り中心で状況を把握するのが安全です。

地雷3:ddは強力だが“間違えると一撃”

ddは正しく使えば有用ですが、入力(if)と出力(of)を取り違えると、元ディスクに上書きしてしまう危険があります。また、不良セクタがある状況でddを素直に走らせると、止まったり極端に遅くなったりします。物理的な読み取り問題が疑われる場合は、一般にddrescueのようにリトライ制御とログを持つ手段が採用されます。


ここまでの結論はシンプルです。“直す系”の操作は、状況が特定できてから。最初にやるのは「観測」と「保全」です。次章から、実際にレスキュー環境で“事実”を集める順序に入ります。

 

第4章: 現状把握の最短手順—lsblk・blkid・fdisk/parted・dmesgで「事実」を集める

ここからは、レスキュー用のLinux(Live USB、レスキューモード、レスキューISO等)で起動している前提で説明します。大原則は、対象ディスクへの書き込みを避けることです。自動マウントが走る環境では、可能なら自動マウントを無効化し、意図しない書き込みが起きないようにします。

手順A:ブロックデバイスを“人間が理解できる形”にする

まずはディスクとパーティションの全体像を確認します。ここで見たいのは「どのデバイスが対象か」「容量は整合しているか」「パーティションが見えているか」です。

  • lsblk:ディスク/パーティション/マウント状況を俯瞰する
  • blkid:ファイルシステム種別、UUID、ラベルを確認する

この時点で「容量が不自然に小さい」「パーティションが丸ごと消えている」「同じ容量の未知デバイスが増えている」などが見えるなら、パーティション層の破損や、コントローラ側の異常も疑います。

手順B:パーティションテーブルを“公式情報”として読む

次に、パーティションテーブルの情報を確認します。MBR方式かGPT方式かで、見るべき点が変わります。

  • fdisk -l:MBR系の把握に強い(GPTも表示はできる)
  • parted -l:GPT/大容量/アライメントの確認に便利
  • gdisk:GPTの整合性チェックやバックアップ/リカバリに寄与(環境により有無あり)

ここでの“なるほど”は、パーティションが見える/見えないは「復旧作業の入口」という点です。見えていないなら、ファイルシステム修復に進むのは順序が逆です。

手順C:カーネルログでI/O異常とデバイス認識を確認する

ディスクが読めているか、読み取りにエラーが出ていないかは dmesg が重要です。特に次のような兆候があれば、ソフトウェアだけで押し切らず、被害最小化の観点で対応を考えます。

  • I/O error の連発、リセット、リンクの再確立
  • デバイスが切断・再接続を繰り返す
  • 極端に読み取りが遅い、タイムアウトが出る

この章のまとめは、「復旧の前に、復旧対象を正しく特定する」です。現場の本音としては、

「コマンドは打てる。でも、どこまでが安全ラインなのか分からない」

になりがちです。次章では、その“安全ライン”を作るために、まずイメージ(クローン)を取り、作業を巻き戻せる状態にする話に進みます。

 

第5章: 触る前に保全—ddrescueでクローン/イメージを作り“書き込み”を止める

「原因究明はあとでいいから、とにかく起動させたい」——その気持ちは分かります。ですがMBR・パーティション障害の現場で一番効くのは、意外と地味なこの一手です。

“対象ディスクに二度と書き込まない状態”を先に作る。つまり、作業対象を“実ディスク”から“クローン/イメージ”へ切り替えます。

なぜ最初に保全するのか

復旧作業は、パーティションテーブルの再構成、ブート領域の再インストール、ファイルシステムの整合性修復など、どうしても書き込みを伴う局面が出ます。そこでミスが起きると、元の手がかり(配置情報やメタデータ)が上書きされて、復旧可能性が落ちます。

また、I/Oエラーや読み取り遅延がある場合、繰り返し読み出すだけでディスク状態が悪化することがあります。だからこそ、読み取りの負荷を制御しながら“取り切る”ことが重要になります。

dd と ddrescue の使い分け(概念の整理)

観点 dd ddrescue(GNU ddrescue)
不良セクタへの耐性 止まる/遅くなることがある 読み取り戦略とログで前進しやすい
再開(リジューム) 工夫が必要 ログファイルで安全に再開しやすい
事故リスク if/of取り違いが致命的 同様に注意が必要だが運用手順化しやすい

安全側の運用(例:ログを残し、段階的に読み取る)

ここでは「正しいコマンドそのもの」より、考え方(段階と記録)を押さえるのが大事です。一般にddrescueは、まず“読めるところを広く速く”取り、次に“読めないところを粘る”という段階的アプローチが取りやすい特徴があります。

例として、ログファイルを作り、イメージファイルへ取得するイメージを示します(環境によりデバイス名は異なります)。

# 例:/dev/sdX を imagefile に取得し、作業ログ rescue.log を残す # まず読める範囲を優先して取得(再試行は控えめ) ddrescue -n /dev/sdX /mnt/recovery/disk.img /mnt/recovery/rescue.log
次に読めなかった箇所へ再試行(回数は状況により調整)
ddrescue -r3 /dev/sdX /mnt/recovery/disk.img /mnt/recovery/rescue.log

重要なのは、ログがあることで「どこまで取れたか」「どこが欠けているか」を把握できる点です。欠損がある状態でパーティションやファイルシステムをいじるのは、難易度が上がります。だから、欠損の位置を把握したうえで次の手を選べます。

“心の会話”を現場の手順に落とす

「いや、イメージ取ってる時間がないんだよ…」

そう感じるのは自然です。ですが、無計画に修復して“さらに壊す”と、結果として復旧に何倍も時間がかかります。BtoBの現場だと、障害対応は個人の腕力ではなく、手順の再現性(Runbook)が問われます。

  • まず保全して“戻れる”状態を作る
  • 次に、イメージ上でパーティション復旧やブート修復を試す
  • 最後に、本番ディスクへ反映するか、データ救出で締めるかを判断する

この順序が作れるだけで、復旧は“運”から“工程”になります。

なお、物理故障が疑われる、RAIDや暗号化が絡む、業務停止リスクが大きい——この条件が揃うほど、一般論の手順だけで押し切るのは危険です。株式会社情報工学研究所のような専門事業者に早めに相談し、読み取り戦略・保全媒体・復旧ゴール(起動復旧かデータ救出か)を最短で確定させる方が、結果的にコストと時間を抑えられます。

 

第6章: パーティションテーブル復旧—TestDiskとsfdiskバックアップ、手動再作成の勘所

パーティションテーブルの障害は、症状が分かりやすい一方で、復旧手順を間違えると“配置情報”を上書きしてしまいます。ここでも基本は同じで、先に保全(第5章)、次に“事実”を集め、最後に復旧です。

まず「消えた」のか「見えない」のかを分ける

パーティションが見えないとき、原因は一つではありません。たとえば次のように分岐します。

  • テーブル自体が破損:fdisk/partedが不自然な表示、未知のタイプ、開始/終了が崩れる
  • ディスク認識の問題:容量が小さく見える、SATA/USB変換やコントローラの挙動不審
  • 上位構成が前提:LVM/RAID/暗号化の上にFSがあり、下層だけ見ても判断できない

ここでの現場の罠は、「fdiskに何も出ない=全部消えた」と決めつけることです。実際は、GPTヘッダの片側が壊れていても、バックアップヘッダ側から復元できることがありますし、逆に表示があるから安全とも限りません。


バックアップを“先に”取る(作業前の保険)

パーティション操作に入る前に、現在見えている情報は可能な範囲で退避します。目的は、やり直せる材料を残すことです。

  • パーティション一覧の出力(例:fdisk/partedの結果をテキスト保存)
  • sfdisk でのダンプ(環境によっては有効)
# 例:MBR系のダンプが可能な場合(環境・方式により差があります) sfdisk -d /dev/sdX > /mnt/recovery/sdX_partition_dump.txt

この“テキストの退避”があるだけで、手動再作成の難易度が下がります。BtoBの現場では、こういう地味なログが後で「説明責任」や「再発防止」の材料にもなります。

TestDiskの位置づけ:自動復元の万能薬ではなく“探索と提示”の道具

TestDiskは、ディスク上に残っている痕跡からパーティション候補を探し、復元可能な構造を提示してくれるツールとして知られています。ただし重要なのは、TestDiskが見つける候補が常に正しいとは限らないことです。過去の構成変更(拡張・縮小・再作成)や、複数OSの共存、LVM/暗号化の有無で、候補が複数出ることもあります。

したがって、運用としては次の順序が安全です。

  • イメージ上でTestDisk等を使い、候補と整合性を確認する
  • 候補の開始セクタ/終了セクタが妥当か(重なり・不自然なギャップがないか)を見る
  • ファイルシステムのシグネチャ(blkid等)と突き合わせる
  • 本番ディスクへ反映するのは“最後”に回す

手動再作成の勘所:開始位置とサイズが命

手動でパーティションを作り直すケースでは、開始位置(start sector)サイズ(end sector/length)が合っていないと、ファイルシステムや上位構成(LVM等)に到達できません。

特に注意したいのは次のポイントです。

  • 4Kアライメント:近年は1MiB境界での開始が多い。ズレると性能問題だけでなく、判定が難しくなることがある。
  • 重なりの回避:候補パーティション同士が重なっている場合は、どちらかが誤りの可能性が高い。
  • 拡張領域(MBRの拡張パーティション):論理パーティションが絡むと構造が複雑になる。
  • GPTの二重ヘッダ:片側が壊れていても、もう片側から整合を取り直せる場合がある。

そして何より、RAID/LVM/暗号化が絡む場合は、パーティションが“入口”に過ぎないことです。たとえばLUKSなら、正しい開始位置でないとヘッダが読めず、復号に進めません。

「ここまでやっても確信が持てない」——その感覚は健全です。パーティション復旧は、一般論の手順で“当てに行く”より、現物の痕跡を踏まえて“確からしさを積み上げる”作業だからです。業務データが絡むなら、株式会社情報工学研究所のような専門家に相談し、構成(RAID/LVM/暗号化/仮想化)を含む全体像から復旧方針を固めるのが合理的です。

 

第7章: MBRとブートローダ復旧—chroot+grub-install、BIOS/UEFI混在の落とし穴

パーティションが見えるようになった(または元から見えていた)のに起動しない。この段階で初めて、「ブートローダ復旧」が主役になります。ここでも急ぎがちな心の声が出ます。

「grub-installしてupdate-grub(or grub-mkconfig)で終わりでしょ?」

半分正解で、半分は落とし穴です。ブート復旧は、BIOS/UEFIの方式/bootやEFI System Partition(ESP)の位置、そしてルートをどこに見立てるかで結果が変わります。

BIOS/UEFIの違いを曖昧にしない

まず事実として、近年のLinuxはUEFIが一般的ですが、現場では次のような“混在”が普通に起きます。

  • サーバはUEFIだが、過去のインストールはBIOS互換モードだった
  • ディスクはGPTだが、BIOS起動用の領域設計が独特(BIOS boot partition等)
  • ESPが別ディスクにある、またはマウントされていなかった

この混在を無視してブートを書き換えると、起動はさらに複雑になります。だから、最初に「今どっちで起動しているか」「OSはどっち想定か」を確認します。


chrootで“そのOSの世界”に入ってから修復する

一般的な流れとしては、レスキュー環境で対象のルートファイルシステムをマウントし、必要な仮想FS(/dev /proc /sys)をバインドしてchrootします。目的は、対象OSのライブラリや設定を使ってブート設定を再生成することです。

ここでの注意点は2つです。

  • マウント先の取り違い:ルートがどのパーティションか、/bootやESPが別かを必ず確認する。
  • ESPのマウント:UEFIの場合、ESPが正しく /boot/efi などにマウントされていないと、期待した場所にブートローダが入らない。

“MBR復旧”と言っても実際は複合領域

MBR方式のディスクでは、MBR領域(先頭の小さな領域)にブートコードとパーティション情報が存在します。一方で、GRUBの実体は /boot 配下や関連領域に配置されます。つまり、ブート復旧は「先頭だけ直せば終わり」ではなく、パーティション・/boot・設定生成の整合が要ります。

ありがちな失敗 結果 回避の観点
ESP未マウントで作業 UEFI側にブートが入らず起動失敗 /boot/efi の実マウントを確認
別ディスクにgrubを書いてしまう 起動順や交換時に再発 対象デバイスをlsblkで確定
復旧前にパーティションが未確定 設定生成がズレる、起動できない 第6章の整合確認を先に

この章のポイントは、ブート復旧が“コマンド一発”ではなく、方式(BIOS/UEFI)とマウント構造を揃える作業だということです。現場の感覚で言えば、

「直せそうで直らないのは、前提のどこかがズレている」

という状態です。次章では、起動の前に(または起動後でも)避けて通れないファイルシステム整合性に入り、fsckをどのタイミングでどう扱うべきかを整理します。

 

第8章: ファイルシステム整合性—fsckは最後の一手、順序と戻せる運用を持つ

パーティションが復旧できた、ブートの前提も揃ってきた。ここで多くの現場が次の独り言に入ります。

「あとはfsckで直せば動くんじゃない?」

結論から言うと、fsckは“有効”ですが、“順序”を間違えると被害最小化に反します。なぜなら、fsckは整合性を取るためにメタデータを書き換えることがあり、その書き換えは基本的に“後戻りできない”方向に進むからです。

まず「読み取りで確認」→「直す」は後

ファイルシステムが疑わしい段階では、最初に“直す”ではなく、どんな種類の不整合があるかを読むのが安全です。例えば ext 系なら、修復を伴わない確認(例:-n オプション相当)で状況を把握し、ログに残します。

重要なのは、第5章で作ったイメージ上で試すことです。実ディスクを直接触ると、判断ミスがそのまま本番状態を固定してしまいます。


ファイルシステム別に「やっていいこと」が違う

Linuxでは、ファイルシステムによって修復ツールの思想が違います。ここを混同すると、うまくいかないだけでなく、状況を複雑にします。

FS 基本スタンス 注意点(現場で起きがち)
ext4 e2fsckで整合性修復が一般的 自動修復(y連打)を急ぐと、失われた情報が“別の形”で確定しやすい
XFS fsckではなくxfs_repairが基本 ログ(journal)やメタデータの扱いを誤ると復旧難度が上がる。読み取り中心で状況確認が重要
btrfs 構造が複雑で、救出系コマンドは慎重運用 チェックや復旧は“効く場合もある”が、状況依存が大きい。まずデータ救出優先の判断が多い

つまり、「fsck」という一語で括ってしまうと、現場の判断が荒くなります。ファイルシステムを特定し、そのFSの“流儀”に沿って手順を組むことが復旧率を上げます。


マウントの仕方が“二次被害”を左右する

整合性が怪しい状態で通常マウントすると、再生(リプレイ)や更新が走り、想定外の書き込みが発生する可能性があります。そこで一般に検討されるのが、読み取り専用(ro)でのマウントや、まずは救出対象を限定したコピーです。

「直して起動させる」より先に「必要なデータを救う」が正しいゴールになることもあります。特にBtoBの現場では、OS復旧が最短とは限らず、サービス復旧(別筐体へリストア)が最短というケースも多いからです。

ここで“被害最小化”の判断軸に戻る

この章の帰結はこうです。修復コマンドは強いが、強いからこそ最後に使う。そして「最後」とは、少なくとも以下を満たした後です。

  • 対象の構成(単体/RAID/LVM/暗号化/仮想化)を把握している
  • 現状ログとパーティション情報を控えている
  • イメージ上で試して、結果が妥当だと確認できている

もしここで「構成が複雑で確証が持てない」「復旧期限が厳しい」「試行錯誤の余裕がない」と感じるなら、一般論だけで押し切るより、株式会社情報工学研究所のような専門事業者に相談して、最短ルート(起動復旧かデータ救出か)を確定した方が結果として安全です。

 

第9章: 復旧後の検証と再発防止—SMART/ログ監視、バックアップ設計(RPO/RTO)まで戻す

起動できた、マウントも通った、データも見える。ここで終わらせたくなるのが現場の本音です。

「とりあえず動いた…今日はこれでいいよね」

ですがBtoBの現場では、“動いた”はゴールではありません。次の障害を防げる状態に戻すところまでが復旧の工程です。特にMBR・パーティション障害は、原因が「誤操作」「更新失敗」「ディスク劣化」「構成変更の事故」など複数あり得るため、再発防止の粒度が重要になります。

復旧直後にやるべき「検証」の最低ライン

復旧直後は、見た目が正常でも内部に問題が残っていることがあります。一般的に、次の観点を順に確認します。

  • 起動経路:BIOS/UEFI設定、ブート順、ESP/bootのマウントが意図どおりか
  • ストレージ認識:lsblk/blkidでUUIDやラベルが整合しているか(fstabと一致しているか)
  • ログ:dmesgやsystemログにI/O error、タイムアウト、再接続が出ていないか
  • サービス観点:アプリ/DB/ミドルウェアが“起動しただけ”でなく整合性を満たすか

原因を切り分けないと再発する(誤操作 vs 物理劣化 vs 設計負債)

MBR・パーティション障害は、結果(起動不能)が同じでも原因が違います。再発防止のため、原因カテゴリを切り分けます。

原因カテゴリ 兆候 再発防止の方向性
誤操作(dd/parted/インストーラ) 作業直後に発生、変更履歴がある Runbook化、権限分離、レビュー、作業前バックアップ(テーブルダンプ/イメージ)
物理劣化(I/O不良) dmesgにI/O error、リトライ、速度低下 早期交換、監視強化、冗長化、読み取り戦略(ddrescue)を前提にする
設計負債(構成の複雑化) 手順が属人化、暗号化/LVM/RAIDが混在し把握困難 構成の棚卸し、ドキュメント整備、復旧訓練、標準化

ここで“なるほど”となるのは、復旧手順が同じでも、再発防止は原因別に全く違うという点です。復旧を「一回の事故対応」で終わらせると、また同じ夜が来ます。


バックアップは「ある」ではなく「戻せる」が正義(RPO/RTO)

現場の本音としては、

「バックアップはあるんだけど、戻す手順が怖い。検証もしてない」

が多いです。だから、再発防止の中心はバックアップ運用の“実装”になります。ここで重要なのがRPO/RTOです。

  • RPO:どこまでのデータ損失を許容するか(例:1時間分ならOKか、1分もダメか)
  • RTO:どれだけの復旧時間を許容するか(例:4時間以内に業務再開が必要か)

MBR・パーティション障害で痛いのは、「OSが起動しない=バックアップがあっても戻せない」状態になり得ることです。だから、復元テスト(リストア演習)を工程として組み込む価値があります。

相談判断を“仕組み”にする

ここまで来ると、一般論の限界も見えてきます。構成が複雑、期限が厳しい、物理不良が疑わしい——この条件では、現場が頑張りすぎるほど損失が増えることがあります。株式会社情報工学研究所のような専門家に相談し、

  • 復旧ゴール(起動復旧/データ救出/別環境へ移行)
  • リスク(書き込みの是非/物理不良の可能性)
  • 最短手順(工程と優先度)

を早期に確定させるのが、結果的に“被害最小化”になります。

 

第10章: 帰結: 障害対応は“推測でコマンド”ではなく“証拠で手順化”—Runbookと相談判断の線引き

ここまでの章を一本の線でまとめます。

MBR・パーティション障害の復旧は、派手な裏技ではなく、「証拠を残し、順序を守り、巻き戻せる状態で作業する」ことで成功率が上がります。逆に言うと、失敗パターンはだいたい同じです。

  • 状況を固定する前に“直し”に走る
  • 壊れた層を特定しないままfsckや再インストールに進む
  • if/ofの取り違えなど、作業事故が起きる
  • 復旧後の検証と再発防止が抜け、同じ夜が再来する

復旧を“工程”にするRunbookの骨格

現場が腹落ちするRunbookは、難しい言葉より“分岐”が明確です。例えば骨格はこれだけで良いです。

  1. 被害最小化:自動マウント停止、書き込み禁止、現状ログ採取
  2. 層の切り分け:ブート/パーティション/FS/上位構成(RAID/LVM/暗号化)
  3. 保全:可能ならイメージ化(ログ付き)、以降はイメージ上で試行
  4. 復旧:パーティション→ブート→FSの順に、必要最小限の介入
  5. 検証:起動・ログ・サービス整合性・I/O兆候の確認
  6. 再発防止:原因別の対策、バックアップと復元訓練、監視と変更管理

この骨格があるだけで、障害対応は属人芸からチームの資産に変わります。


一般論の限界と「相談する」という選択肢

ただし、正直に言うと、一般論だけでは越えられない領域があります。

  • RAID/LVM/暗号化/仮想化が絡み、層が多い
  • I/Oエラーがあり、物理劣化が疑われる
  • 復旧期限が厳しく、試行錯誤の余裕がない
  • 作業ミスが許されない(法務・監査・顧客影響が大きい)

この条件下で「現場で頑張り切る」ことは、必ずしも最適解ではありません。むしろ、“誰が責任を持って判断するか”を明確にし、専門家に早期相談することが被害最小化につながります。

株式会社情報工学研究所のような専門事業者に相談する価値は、単にコマンドを知っているからではありません。構成・リスク・期限を踏まえて、

  • 起動復旧に寄せるべきか、データ救出を優先すべきか
  • どの操作が“不可逆”で、どの順で踏むべきか
  • 現場の制約(停止時間、代替環境、監査対応)をどう設計に落とすか

を、工程として組み立てられるからです。現場が「分かってくれないよなあ」と感じがちな制約を、技術と運用の言葉に翻訳してくれる相手を持つことは、障害対応の保険になります。

もしあなたが今、具体的な案件(契約・SLA・構成・復旧期限)で悩んでいるなら、一般論の延長で粘るより、相談という“小さな一歩”を取ってください。状況整理だけでも、次の手が明確になります。

 

付録: 現在のプログラム言語別—障害対応ツール/復旧スクリプト実装での注意点

MBR・パーティション障害そのものは“運用と手順”の問題ですが、現場では復旧や保全のために小さなツールやスクリプトを書きたくなります。ここでは、主要な言語ごとに「やりがちな事故」と「注意点」を事実ベースで整理します。共通して言えるのは、対象がブロックデバイスや重要領域になるほど、入力ミスが即・上書き事故になるという点です。

Bash / シェル

  • 変数の空展開やワイルドカードで、意図しないデバイスを対象にしやすい(例:/dev/sd? の誤指定)。
  • パイプやリダイレクトで“出力先がどこか”が見えにくく、dd系の事故が起きやすい。
  • 対策:対象デバイスの確定(lsblk出力の固定化)、確認プロンプト、ログ保存、dry-run相当のモードを必ず用意する。

Python

  • ファイル操作が容易な分、ブロックデバイスも“普通のファイル”として扱えてしまい、誤って書き込みを実装しやすい。
  • 巨大ファイル(イメージ)処理でメモリに載せる設計にすると破綻する(ストリーミングが前提)。
  • 対策:読み取り専用をデフォルトにし、書き込みは明示フラグがないと実行されない設計にする。例外時に中途半端な生成物を残す設計も要注意。

Go

  • 並行処理が容易で、つい高速化(並列読み取り)をしたくなるが、劣化ディスクでは負荷が増えて状態を悪化させることがある。
  • ストリーム処理は得意だが、エラー処理を雑にすると「欠損のまま成功扱い」になり得る。
  • 対策:並行度を制御し、欠損位置の記録(ログ)と再試行戦略を設計に含める。

Rust

  • メモリ安全性は高いが、ストレージ操作の“論理安全”は別問題(誤デバイス指定・誤オフセットは普通に起きる)。
  • 低レベルI/Oを組むとき、アライメントやバッファリングで想定外の挙動が出ることがある。
  • 対策:型で守れる部分(読み取り専用ハンドル、対象デバイスIDの固定化)を徹底し、危険操作は二段階確認にする。

C / C++

  • 生I/Oやオフセット指定がしやすい反面、境界や符号、サイズ計算ミスで破壊的な書き込みにつながりやすい。
  • 権限やデバイスアクセスを誤ると、想定外の特権動作になる(セキュリティ事故にも直結)。
  • 対策:読み取り専用の原則、オフセット計算のテスト、デバイス指定の厳格化、レビュー前提で運用する。

Java

  • 大容量ファイル処理でGCやI/Oバッファの設計を誤ると、処理が不安定になり復旧作業の時間見積りが崩れる。
  • NIOで高速化しても、エラー処理が粗いと欠損が埋もれやすい。
  • 対策:ストリーミング前提、欠損の扱いを仕様として固定し、ログを必ず残す。

JavaScript / Node.js

  • 非同期I/Oで一見ラクに書けるが、バックプレッシャーやストリームのエラー伝播を誤ると「途中まで書けた」を成功扱いしやすい。
  • CLI化すると引数の取り回しが増え、誤指定リスクが上がる。
  • 対策:ストリームの完了条件と例外処理を厳格にし、対象デバイスの確認フェーズを実装する。

PHP

  • サーバ用途が多く、タイムアウトやメモリ制限など“実行環境の制約”で途中失敗しやすい。
  • CLI運用でも、設定(memory_limit等)に引きずられがち。
  • 対策:長時間処理前提なら別言語/別プロセス設計を検討し、ログと再開性(リジューム)を最優先にする。

Ruby

  • 書きやすい反面、例外処理を雑にすると“失敗に気づかない”設計になりやすい。
  • 文字コードやパス処理で想定外の挙動が出ることがある(ログ解析・レポート生成で混乱)。
  • 対策:例外の握りつぶし禁止、ログ出力の統一、入出力をストリーム化する。

C#

  • Windows寄りの運用が多く、Linuxブロックデバイス操作は追加知識が必要(権限、デバイスファイルの扱い)。
  • 環境差(ランタイム、権限、ファイルロック)で想定外が起きやすい。
  • 対策:実行環境の差分を吸収する設計と、検証用の安全なテストデータ(ダミーイメージ)を用意する。

Swift / Kotlin

  • 本来はアプリ領域が主戦場で、低レベルI/Oの実装や障害対応ツールには向き不向きがある。
  • “書ける”ことと“運用できる”ことは別で、配布・実行環境の整備がボトルネックになりやすい。
  • 対策:復旧ツールは運用しやすい言語・配布形態(静的バイナリ、標準ツール連携)を優先し、言語選定自体を手順化する。

付録の結論はシンプルです。障害対応ツールは「速く書ける言語」より「事故らない設計と運用」を優先すべきです。特にブロックデバイスやパーティションテーブルを扱うなら、二段階確認、ログ、dry-run、リジューム、読み取り専用デフォルトは“機能”ではなく“安全装置”です。

そして、ツールでやるべき範囲を超えている(物理不良、複雑構成、期限が厳しい)と感じたら、一般論の延長で粘らず、株式会社情報工学研究所のような専門家に相談して、被害最小化の工程を一緒に組み立てるのが合理的です。

注意書き:本記事は、Linux環境におけるMBR・パーティション障害の一般的な原因と復旧アプローチを、現場エンジニア向けに整理した技術解説です。実機の状態(暗号化有無、RAID構成、LVM、ファイルシステム、障害の進行度、書き込み履歴など)によって最適解は大きく変わります。誤った操作は状態を悪化させ、復旧可能性を下げることがあります。重要データが絡む場合は、作業前に必ず「現状の保全(イメージ化)」を最優先し、必要に応じて株式会社情報工学研究所のような専門家へ相談してください。

 

“また起動しない…”──レガシー運用の現場でMBR/パーティション障害が刺さる瞬間

現場の本音から入ります。障害対応って、だいたい「深夜」「人が足りない」「変更履歴が曖昧」の三点セットになりがちです。そこに、突然の再起動ループや grub rescue>、あるいは「ディスクは見えているのにマウントできない」が来る。

頭の中ではこうなりますよね。

「昨日まで動いてたのに…」「ディスク自体は生きてる?死んでる?」「とりあえず fsck?…いや、触ったら終わるやつか?」

MBRやパーティション障害の嫌なところは、“OSの都合”と“ストレージの事実”がズレたまま進行することです。ディスク上のデータが多く残っていても、パーティション情報やブート周辺が壊れるだけで、OS目線では「存在しない」扱いになります。逆に、OSが何かを書き込んだ瞬間に“残っていたはずの手がかり”が消えることもあります。


まず「症状」を言語化すると、原因の候補が絞れます

MBR・パーティション障害は、現象としては似た顔をしますが、実際には「壊れている層」が違います。現場でよく遭遇するパターンを、ざっくり対応表にします。

見える症状(例) 疑う層 典型的な原因の方向性
BIOS/UEFIでディスクが見えない ハード/配線/コントローラ 物理故障、ケーブル、バックプレーン、HBA/RAIDカード
ディスクは見えるがOSが起動しない(grub rescue 等) ブート領域・MBR/EFI・GRUB 更新中断、誤操作、/boot破損、先頭セクタ不良
OSは起動するが、特定ディスク/パーティションが見えない パーティションテーブル/LVM/RAID PT破損、LVMメタデータ不整合、mdraid崩れ
/dev/sdXはあるのに mount できない(unknown filesystem 等) ファイルシステム ジャーナル不整合、メタデータ破損、部分的読めないセクタ

“今この瞬間”にやりがちな落とし穴

最初の30分で、復旧の難易度が決まります。特に以下は、善意でやりがちですが危険です。

  • 焦って fsck をいきなり実行(意図せず修復=書き込みが発生)
  • 自動マウント/自動修復が走る環境で作業(GUI Liveや監視ツールの自動動作)
  • 原因が不明のまま パーティション操作(fdisk/parted)で書き戻し
  • ログを取らずに再起動を繰り返す(状態が変わり、再現性が失われる)

ここまでが「書き出し」です。次章では、この“触ったら悪化”を防ぐための原則(伏線)として、なぜ最初に「書き込みを止める」「保全する」なのかを、エンジニアが腹落ちする形で整理します。

 

まず触らない:書き込み1回で復旧難易度が跳ね上がる理由(証拠保全・最小変更)

「直すなら、とりあえず修復コマンドを…」がエンジニアの自然な反射なのは分かります。でもMBR・パーティション障害は、“修復という名の書き込み”が、手がかりそのものを上書きする典型領域です。

心の会話をそのまま書くと、こうです。

「1回だけなら大丈夫でしょ?」「ログも取れるし、fsck -y で一気に…」

この“1回”が、取り返しのつかない分岐になることがあります。理由はシンプルで、障害時のディスクには、まだ読めるメタ情報(パーティション境界、スーパー ブロックのバックアップ、ジャーナル、LVMメタデータのコピーなど)が残っている可能性が高いからです。修復系コマンドは、その残骸を「正しい状態」に整えるために書き換えます。つまり、後から解析する材料が消えることがあります。


“書き込み”は意外なところで発生します

書き込み=明示的に何かを保存する、だけではありません。たとえば次のような行為でも、状況次第で書き込みが起きます。

  • 通常のマウント(特にジャーナリングFSはメタ更新が走る可能性)
  • 自動fsck(起動時のチェック)
  • スワップの自動有効化、LVMの自動アクティベート
  • RAID構成でのリシンク/リカバリ開始(mdadmやHW RAID)

「自分は書いてない」つもりでも、OSやツールが書くことがある。ここが現場を苦しめます。


原則:最小変更のための“3点セット”

復旧の現場で、最初に揃えたい考え方は以下です。

  1. 対象ディスクを可能な限り読み取り専用にする(OS・ツールの自動書き込みを避ける)
  2. 現状を記録する(コマンド出力・ログ・パーティション情報のダンプ)
  3. イメージ化して、以後の作業はコピーに対して行う(元ディスクに触る回数を最小化)

実務の“読み取り専用”は段階的にやる

理想はハードウェア書き込み防止(Write Blocker)ですが、サーバ運用では難しいこともあります。その場合でも、ソフトウェアでできる範囲を積み上げます。

  • 作業環境はLive OS等で起動し、自動マウントを無効化する
  • blockdev --setro /dev/sdX 等で読み取り専用化を試みる(環境により可否あり)
  • マウントは基本 read-only(例:mount -o ro)で、必要ならさらに慎重に

ここで大事なのは「完璧なROにできないなら意味がない」ではなく、書き込み確率を下げることです。特に、後述する ddrescue のようなイメージ化では、読み取りを繰り返す設計になっているため、対象ディスクの“状態固定”が効いてきます。


なぜイメージ化が“伏線”として効くのか

イメージ化(クローン/イメージファイル化)を先にやると、以降の試行錯誤(TestDiskで探索、gdiskで再構築、ファイルシステムの検証など)を、コピー上で何度でも繰り返せます。逆に元ディスクで直接やると、試すたびに状態が変わり、失敗した時に戻れません。

次章では、MBRとパーティションテーブルの「どこが壊れると何が起きるか」を、必要最小限の構造として整理します。ここを押さえると、ログやツール出力が“意味のある信号”に変わります。

 

MBRとパーティションテーブルの最低限:壊れる場所・壊れ方・見え方の対応表

ここから少しだけ“構造の話”をします。ただし、実務で必要な最小限に絞ります。ポイントは、MBRは「先頭512バイト周辺の約束事」で、そこに「パーティションの境界情報」と「起動の入口」が同居している点です。


MBRの基本構造(超要点)

MBR(Master Boot Record)は、伝統的にディスクの先頭(LBA 0)に置かれます。典型的には次のように理解すると現場で困りにくいです。

領域(概念) サイズの目安 役割 壊れると起きやすいこと
ブートストラップコード 先頭側(例:数百バイト) 次段のブートローダへ制御を渡す 起動不能、ブートローダエラー
パーティションテーブル(エントリ) 64バイト(4エントリ×16バイト) 最大4つの基本パーティションの境界情報 パーティションが“消えた”ように見える
シグネチャ 2バイト(0x55AA) MBRとして認識されるための印 「MBRではない」扱い、BIOS系で起動失敗

“MBRの4つ制限”が、障害時の判断を迷わせます

MBRには設計上の制限があります。復旧時に重要なのは「今のディスクが本当にMBR前提か?」を疑うことです。

  • 基本パーティションは最大4つ(拡張パーティションで論理パーティションを増やす設計がある)
  • 2TB前後の制限(LBAの表現制約により、古典的MBRでは大容量に不利)
  • 境界情報が先頭に集中している(先頭セクタ不良で一気に“全部消えた”に見える)
  • 現代環境ではGPTが主流で、GPTディスクにも「protective MBR」が存在する(見た目が紛らわしい)

ブログタイトルはMBRですが、実際の現場では「MBRと思って触ったらGPTだった」「GPTと思ったらRAIDの仮想ディスクだった」が普通に起きます。だからこそ、次章以降で扱う“現状把握コマンド”が重要になります。


パーティション障害の“見え方”は大きく3系統

パーティション障害は、原因よりも「どう見えるか」で初動が決まります。

  1. 境界情報が壊れた:OSがパーティションを列挙できない/サイズが変/開始セクタが不自然
  2. 境界は見えるが中身が壊れた:マウント不可、FS種類が不明、スーパーブロック不整合
  3. 読み取り自体が不安定:I/O error、CRC error、リトライが増える(媒体/経路の問題を含む)

そしてこの3つは混ざります。境界情報が壊れているように見えて、実は媒体の先頭だけ読めない、ということもあります。だから、次の段階で必要なのは「ログと事実の採取」です。次章では、典型症状をログで読み解き、どの系統に寄っているかを見分ける手順に入ります。

 

典型症状をログで読む:No partition table / unknown filesystem / rescueモードの正体

「起動しない」「マウントできない」と言っても、ログが示している“層”は違います。ここで大事なのは、メッセージを“解釈”する前に“分類”することです。分類できると、次の一手(保全・調査・復旧)がブレにくくなります。

現場の心の会話としてはこうですよね。

「え、これGRUBの問題?それともディスクのパーティションが飛んだ?」「とりあえず手当てして起動だけさせたい…でもデータ優先だよな」


ログは“原因”ではなく“観測点”だと捉える

同じ原因でも、観測する位置(BIOS/UEFI、ブートローダ、initramfs、カーネル、ユーザーランド)で出るメッセージが変わります。よく見るメッセージと、疑う層・次に取るべき行動の例を表にします(あくまで一般的な目安です)。

表示メッセージ(例) 観測点 疑う層 まずやること(原則)
No bootable device / disk not found BIOS/UEFI 物理・配線・コントローラ 電源断で悪化する場合もあるため、再起動連打を避け、ハード経路を点検
grub rescue> / no such partition ブートローダ GRUB設定、/boot、PT境界 元ディスクへ書き込みを避け、ライブ環境で“事実採取→イメージ化”へ
Kernel panic - not syncing: VFS: Unable to mount root fs カーネル root指定、ドライバ、FS破損 root= の指定とデバイス名の変化を確認。修復より先に保全を検討
unknown filesystem type / bad superblock mount/fsck ファイルシステム いきなりfsckで“修復書き込み”をしない。バックアップSBの存在確認はコピー上で
I/O error / blk_update_request: I/O error カーネル/ストレージ 媒体劣化・経路障害 ddrescue等でイメージ化優先。読み取りの回数と順序が重要

“No partition table” の意味を取り違えない

fdisk -l 等で Disklabel type: dos が出ない、または “パーティションが出ない”とき、つい「パーティションが消えた」と断定しがちです。しかし実務では、次の可能性もあります。

  • 先頭セクタ周辺が読めない(媒体不良や経路不安定)
  • GPTディスクで、MBR系ツールの見え方が限定されている
  • RAID/HBA配下で“仮想ディスク”の見え方が変わっている
  • 暗号化(例:LUKS)やLVMの層を見落としている

つまり、「見えない=存在しない」ではないということです。ここでやるべきは“修復”ではなく、事実の採取です。


現状把握で役立つ“安全寄り”の観測コマンド

次章で詳細に触れますが、ここでは「何を見れば良いか」の観点だけ先に示します。基本は読み取り中心の情報取得です。

  • lsblk -f:ブロックデバイスのツリーとFS種別(見える範囲)
  • blkid:既知のシグネチャ(FS/LUKS等)の検出
  • fdisk -l /dev/sdX:MBR系のPT確認(ただし解釈は慎重に)
  • sfdisk -d /dev/sdX:PTをダンプ(コピー上で保管する用途に有効)
  • dmesg -T | tail:I/O error や認識の揺れの確認

ポイントは「出力結果を保存する」ことです。復旧はチーム戦になりやすく、後から“どの時点で何が見えていたか”が効いてきます。


“rescueモード”に入ったときの考え方

grub rescue や initramfs のプロンプトに落ちると、焦って起動復旧(grub-install等)をしたくなります。ただ、ここで対象が業務データを持つサーバなら、優先順位はこうです。

  1. まずデータを守る(イメージ化・保全)
  2. 次に構造を直す(PT/ブート再構築)
  3. 最後に起動を戻す(GRUB/EFI設定の復旧)

“起動だけ”を先に直すと、再構築のための書き込みが入り、後からデータ救出が難しくなるケースがあります。次章では、壊れ方の上位パターン(原因の頻出分類)を整理し、「どの証拠を見れば確度が上がるか」を伏線としてつなげます。

 

壊れ方には上位パターンがある:電源断・誤操作・更新・コントローラ不調・媒体劣化

ここは“犯人探し”ではなく、復旧手順の最適化のための章です。原因が分かると、どこに手がかりが残っていそうか、どの作業が危険か、判断が速くなります。

現場の独り言はだいたいこうです。

「誰か dd した?いや、そんなはず…」「昨日カーネル更新したっけ?」「停電?UPSログどこ?」


上位パターン1:電源断・強制再起動(書き込み途中で止まる)

電源断や強制リセットは、ファイルシステムだけでなく、ブート周辺にも影響します。特に更新中(grub設定更新、initramfs生成、/boot書き換え)に落ちると、起動不能に直結します。

  • 状況証拠:停電ログ、UPSイベント、機器アラート、同時刻の他システム影響
  • 見え方:起動時に突然 grub rescue、または root が見つからず panic
  • 注意点:起動復旧を急ぐと書き込みが増え、データ救出の選択肢を狭める可能性

上位パターン2:誤操作(parted/fdisk/dd などの“即時反映”)

人間の誤操作は、パーティション障害で最も厄介な部類です。理由は、“論理構造が意図的に書き換えられている”からです。特に dd の宛先取り違えは、先頭付近の上書きでMBR/PTが一瞬で壊れます。

  • 状況証拠:作業ログ、シェル履歴、運用手順の直前変更、夜間作業の痕跡
  • 見え方:パーティションが全消失、サイズが不自然、シグネチャが変
  • 注意点:上書き範囲が小さいほど、後段のデータは残っている可能性がある(=先頭の再構築が鍵)

ただし“残っている可能性”は、元ディスクを触るほど下がります。誤操作が疑われる場合ほど、イメージ化が優先です。


上位パターン3:更新(OS/ブートローダ/ストレージ設定の変更)

Linuxでは、更新が複数レイヤに波及します。たとえばカーネル更新で initramfs が変わり、GRUB設定が更新され、/boot が書き換わる。ここで/bootが別パーティションだったり、暗号化やRAID/LVMが絡むと、少しのズレが起動不能につながります。

  • 状況証拠:パッケージ更新履歴、保守ウィンドウ、構成変更記録
  • 見え方:更新直後から起動失敗、root指定の不一致、initramfsで止まる
  • 注意点:“起動復旧=正解”とは限らない。まずデータ確保の優先順位を再確認

上位パターン4:コントローラ/経路不調(見え方が揺れる)

HBA、RAIDカード、バックプレーン、ケーブル、USB-SATA変換など、経路が不安定だと「論理障害」に見えることがあります。読み取りエラーが散発すると、パーティション情報の読み取りに失敗して“消えたように見える”ことがあります。

  • 状況証拠:I/O error、リンクリセット、同一筐体の他ディスクでも似た兆候
  • 見え方:再起動すると見えたり見えなかったり、認識名が変わる
  • 注意点:経路が疑わしいなら、復旧作業より先に“安定した読み取り経路”を確保する

上位パターン5:媒体劣化(読み取りそのものが苦しい)

ディスクが物理的に劣化している場合、復旧の優先順位はさらに明確になります。ファイルシステム修復やパーティション再構築よりも、まず読めるうちに吸い上げる(イメージ化)が最優先です。ここで重要なのが、後の章で扱う ddrescue のような“失敗を前提にした読み取り戦略”です。

この章の結論は、「原因を断定すること」ではなく、原因の上位パターンを押さえた上で、最小変更・保全優先の段取りを選べる状態にすることです。次章では、その段取り(復旧の勝負が決まる準備)に踏み込みます。

 

復旧の勝負は段取りで決まる:ライブ起動、代替媒体、同容量ディスク、作業の固定化

ここからは“手順の設計”です。MBR/パーティション障害の復旧で、結果に直結するのはツールの技巧よりも、最初にどう作業環境を組むかです。

心の会話としては、こういう葛藤があります。

「すぐ直してサービス戻したい」「でも触って悪化したら責任が重い」「復旧作業のための環境を作る時間がない」

だからこそ、再現性のある段取りを、チェックリスト的に持っておく価値があります。


段取りの基本:元ディスクを“実験台”にしない

復旧でありがちな失敗は、元ディスクに対して「試す→失敗→別案→また試す」を繰り返すことです。元ディスクの状態は、試すほど変わり、読み取りも悪化し得ます。原則は以下です。

  1. 元ディスクは保全のために最小限だけ読む
  2. まずクローン/イメージを作る
  3. 復旧の試行錯誤はコピー上で行う

用意すべきもの(現場で詰まりやすいポイント)

“準備不足”がそのまま誤操作につながります。最低限、次を揃えると復旧の成功率と安全性が上がります。

  • 作業用のLive環境(自動マウントを抑制できるものが望ましい)
  • 十分な容量の保存先(イメージ格納先:別ディスク/別サーバ/安全なストレージ)
  • 同容量以上の代替ディスク(クローン先。可能なら同等以上の品質の新品)
  • ログ保存先(コマンド出力・作業メモ。後で説明責任に効く)

特に“保存先がない”は致命的です。イメージ化ができないと、復旧はギャンブルになります。


作業の固定化:最初に“情報採取セット”を決める

現場では、複数人が交代したり、途中で方針が変わったりします。そのとき効くのが「最初に必ず取る情報」の固定化です。例えば次のような粒度で十分です。

目的 例(取得する情報) 備考
デバイス構成の把握 lsblk, blkid, /dev/disk/by-id デバイス名は変わるのでby-id系が役立つ
PT/構造の把握 fdisk -l, sfdisk -d 書き込みを伴わない“読み取り”中心で
不安定さの把握 dmesg のI/O error、読み取りの遅延 媒体/経路不調があるなら先に安定化を検討

“やってはいけない段取り”を先に潰す

段取りの失敗は、だいたい再現します。代表例をあえて書きます。

  • 復旧作業を、運用中OS上でそのまま始める(自動書き込みが起きやすい)
  • クローン先が不安定(USBハブ多段、電力不足、途中で切れる)
  • 作業メモが残らず、何を実行したか追えない
  • “復旧を急ぐ”あまり、イメージ化を飛ばしてPT再構築を先にやる

ここまでが“準備の章”です。次章(sec07)では、準備が整った前提で、実際に現状把握をどの順序で進めるか(lsblk/blkid/fdisk/sfdiskの読み方)に入ります。さらにその次(sec08)で、イメージ化(ddrescue)の実務へつなげます。

 

現状把握フェーズ:lsblk/blkid/fdisk/sfdiskで「見えている事実」だけを集める

この章の目的はシンプルです。「推測を減らし、観測事実を増やす」。MBR・パーティション障害の復旧は、最初の“読み違い”が致命傷になりやすいので、まずは淡々と事実を集めます。

心の会話で言うと、ここです。

「どれが対象ディスクだっけ…?」「/dev/sda が昨日までの /dev/sdb になってない?」「RAID?LVM?暗号化?どこまでが“ディスク”なんだ?」


大原則:デバイス名ではなく “by-id” を基準にする

Linuxでは、接続順や検出順で /dev/sdX が変わることがあります。復旧手順では、対象を取り違える事故が最も怖いので、可能な限り安定識別子を使います。

  • ls -l /dev/disk/by-id/(メーカー/シリアルを含む識別が多い)
  • ls -l /dev/disk/by-path/(接続経路で追える場合がある)

この段階で「対象はこれだ」と確信できないなら、作業を進めない方が安全です。現場での事故の多くは、ここで起きます。


1) lsblk:ツリー構造で“層”を見抜く

lsblk は、ブロックデバイスがどのように積み上がっているか(物理→パーティション→LVM→暗号化など)を俯瞰できます。まずは次のように実行して、結果をログとして保存します。

lsblk -o NAME,KNAME,SIZE,TYPE,FSTYPE,UUID,MOUNTPOINT,MODEL,SERIAL

見どころは、TYPEFSTYPE、そしてツリーの親子関係です。

観測ポイント 何が分かるか 典型的な注意点
TYPE が disk / part / lvm / crypt など 構造の層(物理→分割→論理) “パーティションが見えない”前に、そもそも層が違う場合がある
FSTYPE が空欄 シグネチャが検出できていない PT破損だけでなく、先頭セクタの読み取り不安定でも起きる
MOUNTPOINT が付いている どこかでマウントされている 自動マウントに注意。意図せず書き込みが走る可能性がある

2) blkid:シグネチャを“拾えるだけ拾う”

blkid は、ファイルシステムやLUKSなどのシグネチャを検出します。PTが壊れていても、ディスク上のどこかにシグネチャが残っていれば手がかりになります。

blkid

ただし注意点があります。blkid に何も出ない=中身がないではありません。検出できないだけ、という可能性があります。ここで焦って「初期化しよう」「作り直そう」は最悪の方向です。


3) fdisk:パーティション境界の“主張”を読む

fdisk -l はMBR系の情報を中心に見ます(GPTでもある程度見えますが、解釈は慎重に)。対象ディスクを明示して実行し、結果を保存します。

fdisk -l /dev/sdX

ここで見るのは、「開始セクタ」「終了セクタ」「サイズ」「タイプ」が自然かどうかです。不自然の例としては、以下が挙げられます。

  • 開始セクタが 0 や極端に小さく、現代的なアラインメントと合わない
  • サイズが明らかにおかしい(ディスクより大きい、極端に小さい)
  • 想定していたパーティション数が消えている

ただし、fdiskの表示は“真実”ではなく“読めた範囲の解釈”です。読み取りが不安定だと誤った解釈が出ることもあります。


4) sfdisk:パーティション情報をダンプして「差分比較」できる形にする

sfdisk -d は、パーティションテーブルをテキストとして吐き出します。復旧作業では、現状→試行→現状の比較が重要なので、最初にダンプを取っておく価値があります。

sfdisk -d /dev/sdX > sfdisk_dump_before.txt

このテキストは後で「復旧ツールが提案した境界」と比較する材料になります。ここまでを取れたら、次の章で扱う“イメージ化”に進みます。


この章の結論:いきなり直さない、まず“状態を固定”する

現状把握のフェーズでやることは、診断の精度を上げるための材料集めです。ここで得た情報が、次章の ddrescue による安全な保全(クローン/イメージ)と、その後のパーティション再構築(TestDisk/gdisk)に直結します。

 

最優先はイメージ化:ddrescueで安全にクローンし、失敗セクタを可視化する

ここが復旧の“背骨”です。ディスク障害が疑われるとき、復旧作業の勝率を上げる基本は、元ディスクを守りながら、読める範囲を最大化すること。そのために、一般的な dd ではなく、失敗を前提に設計された GNU ddrescue(一般に ddrescue コマンド)を使う場面が多くなります。

現場の本音としては、こうなりがちです。

「ddで丸ごと吸えばいい?…でもI/O errorで止まったら終わる」「何回も読み直すとディスクが死にそう」「それでも今やるしかない」


ddrescueの重要ポイント:mapfile(ログ)で“やり直し可能”にする

ddrescueの特徴は、読み取りに失敗した箇所を記録(mapfile)し、次回以降の実行で続きから戦略を変えて読み直せる点です。つまり、無駄な再読み込みを減らし、ディスクへの負荷を抑えながら回収率を上げられます。

要素 役割 実務上の意味
入力(元ディスク) 救出対象 ここには“極力書かない”。読み取り回数も管理する
出力(クローン先) 作業用コピー 以後の復旧はここで試す。失敗してもやり直せる
mapfile(ログ) 救出状況の地図 どこが読めた/読めないかを保持し、再実行で効く

実務の進め方:まずは“広く浅く”、次に“狭く深く”

ddrescueは一般に、最初は読みやすいところを素早く回収し、次に失敗領域を粘る、という段階的な読み取りが行われます。ここでは考え方の粒度で示します(環境によりオプションは調整が必要です)。

  1. 第1段階:読めるところを優先して全体を一周し、回収率を稼ぐ
  2. 第2段階:失敗した領域を中心に再試行し、回収率を上げる
  3. 第3段階:必要に応じてブロックサイズや戦略を変え、重要領域(先頭/メタ情報周辺)を狙う

この“段階”があることで、ディスクが悪化して途中で完全に読めなくなっても、少なくとも第1段階で回収できた領域は残ります。


対象取り違え防止:入力と出力の確証を取る

ddrescueに限らず、クローン作業で最も危険なのは「出力先を間違える」ことです。対策として、作業前に次を徹底します。

  • 入力・出力とも /dev/disk/by-id/... を使い、シリアルを目視確認する
  • lsblk でサイズとMODEL/SERIALが一致しているか再確認する
  • 出力先は“空”であること(少なくとも、上書きして良いと確信できること)

ここを曖昧にしたまま実行するのは、復旧以前に事故になります。


失敗セクタの“可視化”が、その後の復旧戦略を決める

mapfileとddrescueの結果から、「どの領域が読めていないか」が見えてきます。例えば、先頭付近が読めていないなら、MBR/パーティション情報が読めず“消えたように見える”可能性が高まります。逆に、先頭は読めているのに中盤が広く欠損しているなら、ファイルシステムの一部破損やデータ欠損を前提に復旧計画を立てる必要があります。

ここで大事なのは、欠損があること自体を隠さずに把握することです。欠損を把握できれば、後段で「どの復旧を試すか」「どこまでを復旧判定とするか」を合理的に決められます。


“SMARTを見るべきか”はケースバイケース

補助情報として smartctl(SMART情報取得)を使うことがありますが、障害が進行しているディスクではアクセス自体が負荷になる場合もあります。実務では、

  • すでにI/O errorが多発しているなら、SMART取得よりもイメージ化を優先
  • 経路不調(ケーブル等)が疑わしいなら、先に経路を安定化してから判断

のように、目的(判断材料が欲しいのか、回収を急ぐのか)で選びます。


この章の結論:復旧作業は“コピー”に対してやる

ddrescueでイメージ化できたら、以降のパーティション再構築(TestDisk/gdisk)やファイルシステム検証は、原則としてクローン/イメージ側で行います。元ディスクに戻って作業するのは、「コピーでは検証できない理由」がある場合に限り、慎重に判断します。

次章(sec09)では、いよいよパーティション再構築の実務に入ります。重要なのは「候補を検証し、確信できるまで書き戻さない」ことです。

 

パーティション再構築の実務:TestDisk/gdiskで候補を検証し、書き戻しは最後に

ここから先は、いわゆる「直す」工程に入ります。だからこそ、繰り返しになりますが原則は変えません。書き戻し(write)は最後、まずは候補を“検証”して確度を上げます。できれば、前章までで作ったクローン/イメージに対して作業します。

現場の心の会話は、たぶんこうです。

「見えないパーティション、ツールで復活させればいける?」「でも一度書いたら戻れない…」「“候補”が複数出たら、どれが正しいんだ?」


パーティション再構築でやるべきことは「境界の復元」と「中身の整合」

パーティションテーブルが壊れているとき、復旧の中心は 開始セクタ(start)とサイズ(end) を正しく復元することです。境界が合わないと、ファイルシステムが途中から始まっているのに先頭から読みに行ってしまい、当然マウントできません。

逆に言えば、境界さえ合えば、ファイルシステムの内部構造がある程度残っている限り、読み取りできる可能性が出ます。


TestDisk:探索して「あり得る境界」を見つける発想

TestDiskは、消えた/壊れたパーティションを探索し、候補を提示するタイプのツールとして知られています。重要なのは、TestDiskが提示するのは“候補”であり、必ずしも自動的に正解ではない、という点です。

  • 候補が複数出るのは珍しくない(過去の構成の痕跡、誤検出、断片情報など)
  • 候補のうち「中身の一覧が見える」「ディレクトリツリーが自然」などの観点で確度を上げる
  • 書き込み(パーティションテーブルへの反映)は最後に回す

“ディレクトリが見えるか”は強い検証材料ですが、媒体劣化や欠損があると一部が見えないこともあります。だから、1つのシグナルに依存せず、次のように多面的に確かめます。

検証観点 見るもの 腹落ちポイント
境界の自然さ 開始セクタ、アラインメント、サイズ 極端に不自然な開始位置は疑う
中身の妥当性 ディレクトリ、既知のファイル名、構造 “それっぽい”ではなく、運用実態に一致するか
シグネチャ一致 blkid/ファイルシステム種別の整合 想定FS(ext4等)と矛盾しないか
ログ整合 過去の構成メモ、監視/構成管理情報 「昔こうだった」痕跡と今の候補が一致するか

gdisk:GPT系の修復・確認で出番がある(ただし“MBRだと思い込まない”)

ブログタイトルはMBRですが、現代のLinuxサーバではGPTが使われていることも多いです。GPTでは、先頭だけでなく末尾にもテーブルのバックアップがあり、状況によっては「バックアップから復元できる」ことがあります。

ここで重要なのは、MBR前提の操作をGPTに対して行わないことです。逆も同じです。最初の現状把握(lsblk/blkid/fdisk/sfdisk)で「ディスクがどちらの方式か」を見極めるのが伏線になっています。


書き戻す前にやるべき“読み取り検証”

候補の境界が定まったら、すぐにテーブルへ反映するのではなく、可能な範囲で読み取り検証します。代表的には次の流れです。

  1. 候補の開始位置・サイズをメモ(スクリーンショットやログに残す)
  2. クローン/イメージ側で、その境界を使ってデバイスとして扱える状態にする(環境により手法は異なる)
  3. マウントは原則 read-only(mount -o ro)で試し、ディレクトリや重要ファイルを確認

この「read-onlyで中身を確認できる」状態まで来れば、復旧の成功確度は大きく上がります。逆に、ここを飛ばして書き戻すと、間違った境界で上書きが入り、取り返しがつかなくなる可能性が出ます。


“起動復旧”を先にやりたくなったときの判断基準

パーティションが戻りそうだと分かった瞬間、「よし、GRUBを入れ直して起動を…」となりがちです。ただ、業務データが重要なら、次の優先順位を守る方が安全です。

  • 最優先:読めたデータを別媒体へ退避(復旧=サービス復帰ではなく、まずデータ確保)
  • 次:構造(PT)を安定化し、再現可能な状態にする
  • 最後:起動復旧(GRUB/EFIの修復、設定復元)

この章のまとめは、「ツールで直す」ではなく、候補を検証してから最小限の書き戻しを行うという実務の型です。次章では、マウントできた後に必ずやるべき“整合性確認”と“復旧判定”、そして再発防止までを扱います。

 

マウントできた“その後”が本番:整合性確認・復旧判定・再発防止(バックアップ/BCP)

パーティションが見えて、read-onlyでもマウントできた。ここで一息つきたくなります。でも、運用の現場ではここからが本番です。なぜなら「マウントできた=業務的に復旧できた」とは限らないからです。

心の会話でいえば、こうです。

「見えた!助かった!…でもこのファイル、開ける?DBは整合してる?」「復旧できたって報告していい?」「また同じ事故が起きたら、次はもっと厳しいよな…」


復旧判定は“技術”と“業務”の二段階で考える

技術的には見えても、業務的には「必要なデータが揃っていない」「一部欠損が許容できない」ことがあります。復旧判定を曖昧にすると、後で必ず揉めます。現場で役立つ観点を整理します。

判定軸 見るべきもの 落とし穴
技術的復旧 ディレクトリ参照、重要ファイルの読み出し、ログの欠損 “見える”だけで安心して書き込み修復を始めると悪化する
業務的復旧 業務システムの整合(DB/トランザクション/設定) データは戻っても、アプリ整合が崩れていると復旧扱いにならない
説明責任 何をしたか、何が欠損か、再発防止案 手順ログがないと、原因追跡も再発防止もできない

整合性確認:やる順番を間違えない

マウント後の整合性確認で重要なのは、いきなり修復しないことです。まずは“読み取りでの検査”→必要なら“コピー上で修復”という順にします。

  • まず read-only で必要データを退避(最重要)
  • ファイル単位で重要データの実読(開けるか、破損していないか)
  • 必要に応じて、コピーに対してファイルシステムチェック(修復オプションは慎重に)

ファイルシステムの修復コマンド(例:fsck系)は、原理的にメタデータを書き換えます。実務では、元ディスクではなくクローンで実施し、結果が良いと確信できた段階で次の手を考えます。


復旧後に“やり切るべき”再発防止(一般論の限界も含めて)

MBR/パーティション障害は、単なる技術トラブルではなく、運用設計の問題として再発します。よくある再発要因と、現場で取りやすい対策の方向性を整理します。

再発要因(例) 対策の方向性 ポイント
停電・強制再起動 UPS、保守手順、更新手順の見直し 更新中断がブート周辺に刺さる。保守ウィンドウとロールバック設計が重要
誤操作(dd/parted) 権限分離、レビュー、作業手順の固定化 “作業者の注意”だけでは再発する。仕組みで防ぐ
経路不調(HBA/ケーブル) 冗長化、部品交換計画、監視 論理障害に見える物理問題は多い。I/Oエラーの早期検知が効く
媒体劣化 交換計画、S.M.A.R.T.監視、バックアップ “いつか壊れる”前提で設計する。壊れてからでは遅い

ここからが「一般論の限界」:構成が複雑なほど、正解が分岐する

この記事では、MBR/パーティション障害の基本手順を「最小変更→現状把握→イメージ化→再構築→検証→再発防止」として整理しました。ただし、現実の案件では、次のような条件が重なると、判断が一気に難しくなります。

  • RAID(HW RAID / mdraid)やLVMが絡む(層が増えるほど誤解釈が増える)
  • 暗号化(LUKS等)がある(復旧の前提情報が変わる)
  • DBや業務アプリの整合性要件が厳しい(“ファイルがある”だけでは復旧と認められない)
  • ディスク劣化が進行している(読み取り戦略自体が勝負になる)

ここがまさに「一般論の限界」です。記事の手順は“安全側の型”ですが、個別案件では「どこまでを復旧とするか」「どの順番で作業するか」「どの時点で専門設備や解析が必要か」を、構成・契約・許容損失を踏まえて決める必要があります。


締めくくり:現場で悩んだら、専門家に“設計として”相談する価値がある

MBR/パーティション障害は、直せるかどうか以前に、「触ってよい順番」「触ってはいけない領域」「どこまでが許容損失か」を決めることが難しい問題です。現場のエンジニアが抱えがちな本音——

「止められない」「でも失敗は許されない」「説明が難しい」

——は、技術だけでなく運用・契約・責任範囲の問題として現れます。

株式会社情報工学研究所では、データ復旧だけでなく、システム設計保守やBCP・機密保持の観点も含めて、“復旧を単発で終わらせない”相談(再発防止や運用設計まで)を前提に整理できます。もし「この構成で、この状況で、どこまでを安全にやれるか」が不安なら、一般論で粘るより先に、具体条件(構成、症状、ログ、契約上の要件)を揃えて相談した方が、結果として早く・安全に着地しやすいです。

ここから先は付録として、復旧ツールを自作・自動化する際に使われがちなプログラミング言語ごとの注意点をまとめます(復旧作業の自動化は便利ですが、実装の落とし穴がそのまま“事故”に直結しやすいためです)。

 

付録:現在のプログラム言語各種にそれぞれの注意点(復旧・保全ツールを作る/自動化するなら)

ここでは「どの言語が優れているか」ではなく、MBR/パーティション障害のような“壊したら終わり”の領域で、各言語で事故りやすいポイントを列挙します。復旧現場の自動化は、手順の標準化やログ取得に強い反面、バグが致命傷になりやすいので、注意点を把握しておく価値があります。


共通の注意点(言語を問わず必須)

  • 対象デバイスの取り違え防止:by-id固定、シリアル確認、ダブルチェック、ドライラン
  • デフォルトで書き込みをしない設計:read-onlyを基本に、writeは明示フラグが必要
  • ログの完全性:実行コマンド、引数、開始/終了、対象、ハッシュ、エラーを必ず残す
  • エラーハンドリング:I/O error を“成功扱い”にしない。部分成功を定義し、判断を止める
  • 権限・実行環境:root権限が絡むため、最小権限・隔離環境・監査が重要

Python

  • 便利さが“危険な自動化”に繋がりやすい:一発スクリプトが運用に入り、レビューなしで常用されがち
  • バイナリ/ブロックI/Oの扱い:読み書きの単位、例外処理、部分読み取りを丁寧に設計しないと欠損を見落とす
  • 外部コマンド呼び出しの落とし穴:subprocessの戻り値、stderr、タイムアウト、シグナルを厳格に扱う
  • 依存関係:環境差(ディストリ、Python版、ライブラリ版)で再現性が崩れるため、固定化が必要

Shell(bash等)

  • ワンミスが即事故:変数展開、クォート漏れ、ワイルドカード、空変数が致命的になりやすい
  • エラーを見逃しやすい:パイプの途中失敗、戻り値未確認、set -eの誤用/過信
  • 可搬性:環境差(GNU/BSD、busybox)で挙動が変わる。復旧現場では特に危険

C / C++

  • メモリ安全性:バッファオーバーラン等が復旧ツールの信頼性を下げる(最悪、誤書き込みや誤判定へ)
  • 低レベルI/Oの責任が重い:セクタ境界、エンディアン、構造体パディング、直接I/Oの挙動を理解して実装する必要
  • 未定義動作:環境差で結果が変わりやすく、解析ツールとしては再現性確保が課題

Rust

  • メモリ安全は強いが、I/O設計は別問題:誤った対象選択、誤った境界計算はRustでも防げない
  • エコシステムの選定:クレート品質のばらつき、メンテ状況、OS依存I/O周りの成熟度を見極める必要
  • unsafeの扱い:低レベル実装でunsafeが増えると、結局C同様のリスクが戻る

Go

  • 並行処理の使い過ぎ:ディスクI/Oは並行化が逆効果になることがある(リトライ増、負荷増、タイムアウト増)
  • バッファリング:読み書きの単位設計を誤ると性能/再現性に影響。ログとエラーの扱いは厳格に
  • クロスコンパイルは強いが、OS差は残る:デバイスアクセス権限やデバイスパスの差に注意

Java

  • “OS/デバイス直叩き”が不得意:結局ネイティブ呼び出しや外部コマンド依存になりやすい
  • 巨大ログ/大容量データの扱い:ヒープ、GC、ストリーム設計を誤ると途中で落ちる(復旧作業の途中停止は痛い)
  • 文字コード/パス:ログ解析やファイル名で想定外が起きやすい。UTF-8固定などの方針が必要

C#(.NET)

  • Windows親和が高い反面、Linux現場では運用差が出る:権限、デバイスアクセス、依存の配布方法の差に注意
  • P/Invokeや外部コマンド依存:結局そこが故障点になる。戻り値とstderrの解釈を厳格に
  • 例外の握りつぶし:非同期/タスクで例外が見えにくい設計にしない

JavaScript / TypeScript(Node.js)

  • ブロックデバイス操作は慎重に:OS依存が強く、権限やストリームの扱いで事故りやすい
  • 非同期I/Oの罠:順序保証が必要な工程(イメージ化、検証)で、並列化が誤動作を生むことがある
  • 依存ライブラリ:供給網リスクだけでなく、メンテ切れ・破壊的変更で再現性が崩れる

PHP / Ruby

  • 運用自動化で使うなら“安全柵”が必須:ワンショットで現場投入されがち。対象確認とドライランを必須に
  • 大容量処理の設計:メモリ、ストリーム、タイムアウト設定を誤ると途中停止が起きる
  • 外部コマンド依存:結局、subprocessの戻り値・ログ・例外設計が品質を決める

Swift / Kotlin(主にモバイル・アプリ寄り)

  • 復旧“本体”より周辺ツール向け:現場のディスクに直接触るより、管理UIやログビューアに向く
  • 権限/サンドボックス:直接デバイスアクセスが前提の復旧作業には制約が大きい

SQL

  • 復旧後の整合確認で強い:DBの論理整合、欠損の検出、差分抽出に有効
  • ただし“復旧そのもの”はSQLではできない:ストレージ層の問題をアプリ層の操作で埋めようとすると事故る

まとめ:自動化は武器だが、事故もスケールする

復旧・保全の自動化は、手順の標準化やログの完全性に大きく寄与します。一方で、対象デバイスの取り違えや、意図しない書き込みのような事故も“自動でスケール”します。だからこそ、言語選定以上に、安全設計(read-only基本、ドライラン、二重確認、ログ、権限分離)が重要です。

そして結局のところ、個別案件では「構成」「契約」「許容損失」「復旧の定義」によって正解が分岐します。一般論の手順だけで判断が難しい、あるいは一度の失敗が許されない状況なら、株式会社情報工学研究所のような専門家に、ログと構成情報を揃えたうえで相談するのが安全です。復旧だけでなく、再発防止(バックアップ設計、保守手順、BCP)まで含めて“設計として”整理することで、次の障害対応コストを現実的に下げられます。

はじめに


Linux環境におけるMBRとパーティションの重要性を理解する Linux環境におけるMBR(Master Boot Record)とパーティションは、システムの安定性やデータの整合性を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。MBRは、ハードディスクの最初の部分に位置し、オペレーティングシステムを起動するための情報を保持しています。一方、パーティションはディスクを論理的に分割し、異なるファイルシステムを管理するための仕組みです。これらが正常に機能しない場合、システムの起動失敗やデータの損失といった深刻な問題が発生します。 特に、企業においては、データの保全と業務の継続性が求められます。そのため、MBRやパーティションに関する障害が発生した際には、迅速かつ適切な対応が必要です。本記事では、Linux環境におけるMBRやパーティションの障害の原因や具体的な事例、さらにはそれらの復旧手順について詳しく解説します。これにより、万が一のトラブルに備え、安心してシステムを運用できる知識を得ていただければ幸いです。



MBRとパーティションの基本概念を解説


MBR(Master Boot Record)は、ハードディスクの最初の512バイトに位置し、オペレーティングシステムを起動するための重要な情報を保持しています。具体的には、ブートローダーの位置や、パーティションテーブルと呼ばれる、ディスク上のパーティションの情報が含まれています。これにより、コンピュータはどのオペレーティングシステムを起動すべきかを判断します。 一方、パーティションは、物理ディスクを論理的に分割した領域であり、それぞれが異なるファイルシステムを持つことが可能です。例えば、Linuxではext4やXFSなどのファイルシステムが一般的に使用されます。パーティションを分けることで、データの整理や管理が容易になり、異なるオペレーティングシステムを同じディスク上で運用することも可能になります。 MBRとパーティションの適切な管理は、システムのパフォーマンスやデータの安全性に大きく影響します。障害が発生した場合、これらの情報が損なわれることで、システムの起動失敗やデータの損失が引き起こされることがあります。そのため、これらの基本概念を理解し、適切なバックアップや復旧手順を準備しておくことが重要です。



一般的なMBR・パーティションの障害事例


一般的なMBRやパーティションの障害には、さまざまな原因が考えられます。まず、ハードウェアの故障が挙げられます。特に、ハードディスクの物理的な損傷や劣化は、MBRやパーティション情報の破損を引き起こすことがあります。これにより、システムが正常に起動しなくなり、データのアクセスができなくなる場合があります。 次に、ソフトウェアの不具合も重要な要因です。オペレーティングシステムのアップデートやインストール中にエラーが発生すると、MBRやパーティションテーブルが破損することがあります。また、ウイルスやマルウェアによる攻撃も、これらの情報の改ざんを引き起こすことがあります。 さらに、ユーザーの操作ミスも見逃せません。例えば、誤ってパーティションを削除したり、フォーマットを行ったりすると、重要なデータが失われる可能性があります。このような事例は、特にデータのバックアップを怠った場合に深刻な影響を及ぼします。 これらの障害が発生した際には、迅速な対応が求められます。次章では、これらの障害に対する具体的な対策や復旧手順について詳しく解説します。



障害発生時の初期対応と確認手順


障害が発生した際の初期対応は、迅速かつ冷静に行うことが重要です。まず、システムの状態を確認し、どのような障害が発生しているのかを特定する必要があります。具体的には、システムの起動時に表示されるエラーメッセージや、ログファイルを確認することで、問題の手がかりを得ることができます。 次に、ハードウェアの状態をチェックします。ハードディスクの異音や不具合がないかを確認し、必要に応じて接続を見直すことも重要です。特に、物理的な損傷が疑われる場合は、無理にシステムを起動しない方が良いでしょう。これにより、さらなるデータ損失を防ぐことができます。 ソフトウェアの面では、最近の変更やアップデートが障害の原因となっている可能性があります。最近インストールしたアプリケーションやドライバーを確認し、問題が発生する前の状態に戻すことを検討してください。また、ウイルススキャンを実施し、悪意のあるソフトウェアが影響を及ぼしていないかを確認することも重要です。 最後に、データのバックアップが存在するかを確認します。バックアップがあれば、復旧作業を進める際の大きな助けとなります。これらの初期対応を通じて、問題の特定と迅速な復旧作業が可能になります。次章では、具体的な復旧手順について詳しく説明します。



Linuxツールを用いた復旧方法の詳細


Linux環境におけるMBRやパーティションの障害からの復旧には、さまざまなツールを活用することができます。ここでは、代表的なツールとその使用方法について詳しく解説します。 まず、`TestDisk`は、パーティションの復元やMBRの修復に非常に効果的なオープンソースのツールです。TestDiskは、破損したパーティションテーブルをスキャンし、失われたパーティションを復元する機能を持っています。操作は比較的簡単で、コマンドラインから起動し、ウィザードに従って進めることで、直感的に操作することが可能です。 次に、`GParted`は、パーティションの管理を行うためのGUIツールです。GPartedを使用することで、パーティションのサイズ変更やフォーマット、削除が簡単に行えます。障害が発生したパーティションの状態を視覚的に確認できるため、初心者にもおすすめです。 さらに、`dd`コマンドを使ったディスクイメージの作成も重要です。障害が発生する前にディスクのバックアップを作成しておくことで、万が一の際にシステムを復元する手助けとなります。`dd if=/dev/sdX of=/path/to/backup.img`のように実行することで、指定したデバイスのイメージを作成できます。 これらのツールを活用することで、MBRやパーティションの障害からの復旧作業を効率的に進めることができます。次章では、これらの方法を用いた具体的な復旧手順についてさらに詳しく説明します。



復旧後の確認と最適化手順


復旧作業が完了した後は、システムの正常性を確認し、最適化を行うことが重要です。まず最初に、システムの起動が正常に行われるかを確認します。これには、オペレーティングシステムが正常に立ち上がり、ユーザーインターフェースが表示されるかをチェックすることが含まれます。次に、データの整合性を確認するために、重要なファイルやフォルダにアクセスし、内容が正しいかどうかを検証します。 その後、パーティションの状態を確認するために、`fsck`コマンドを使用してファイルシステムのチェックを行うことをお勧めします。このコマンドは、ファイルシステムのエラーを検出し、自動的に修復する機能を持っています。また、バックアップの作成も忘れずに行い、今後の障害に備えることが重要です。 さらに、システムのパフォーマンスを最適化するために、不要なファイルやアプリケーションを削除し、ディスクの空き容量を確保します。これにより、システムの動作が軽快になり、安定性が向上します。最後に、定期的なバックアップスケジュールを設定し、データ保護の体制を強化することをお勧めします。これらの手順を実施することで、復旧後のシステムの健全性を維持し、今後の問題を未然に防ぐことができます。



MBR・パーティション障害への備えと復旧の重要性


Linux環境におけるMBRやパーティションの障害は、システムの安定性やデータの整合性に深刻な影響を与える可能性があります。そのため、これらの障害に対する理解と適切な対策が不可欠です。まず、MBRやパーティションの基本的な役割を理解し、障害の原因を把握することで、早期の問題発見が可能になります。障害が発生した際には、迅速な初期対応が求められ、適切なツールを使用して復旧作業を行うことが重要です。 復旧後は、システムの正常性を確認し、データの整合性を保つための最適化を行うことが必要です。また、定期的なバックアップを実施することで、将来的な障害に備えることができます。これらの手順を通じて、企業はデータ保護の体制を強化し、業務の継続性を確保することができます。MBRやパーティションの障害に対する備えと復旧の重要性を再認識し、安心してシステムを運用していきましょう。



今すぐバックアップと復旧手順を見直そう


データの保護と復旧は、企業の情報資産を守る上で非常に重要です。MBRやパーティションの障害に備えるためには、日常的なバックアップの実施と、復旧手順の見直しが不可欠です。定期的にバックアップを行うことで、万が一のトラブル時にも迅速に対応できる体制を整えることができます。 また、復旧手順を明確にし、チーム内で共有することで、障害発生時の混乱を最小限に抑えることが可能です。これにより、業務の継続性を確保し、データ損失のリスクを軽減することができます。今一度、バックアップ体制や復旧手順を見直し、安心してシステムを運用できる環境を整えましょう。あなたの企業のデータを守るための第一歩を、今すぐ踏み出してみてください。



復旧作業における注意事項とリスク管理


復旧作業を行う際には、いくつかの注意点とリスク管理が重要です。まず、復旧作業を開始する前に、必ず作業環境を整えましょう。静電気対策や適切な工具を用意し、ハードウェアに損傷を与えないよう注意が必要です。また、復旧作業中はシステムの状態を常に確認し、予期しない問題が発生した場合には直ちに作業を中止することが重要です。 次に、データのバックアップが存在するかを確認することが不可欠です。バックアップがない場合、復旧作業中にデータがさらに損失するリスクが高まります。万が一のために、複数のバックアップを異なるメディアに保存しておくことを推奨します。 さらに、復旧ツールの選定にも注意が必要です。信頼性の高いツールを使用することで、誤ってデータを上書きしたり、さらなる損傷を与えたりするリスクを軽減できます。特に、オープンソースのツールを使用する場合は、最新のバージョンを選ぶことが重要です。 最後に、復旧作業後には、システムの状態を十分に確認し、必要に応じてさらなる最適化を行うことをお勧めします。これにより、将来的な障害を未然に防ぎ、安定した運用を継続するための基盤を築くことができます。



補足情報


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